この記事のポイント
- WAISは「発達障害かどうか」を判定する検査ではなく、認知の凸凹を数字で見える化するツール
- 大事なのは全体のIQではなく、4つの指標の間にどれくらい差があるか
- 「IQが高いのに特定の場面で詰まる」パターンには、凸凹が関係していることがある
- 結果の数字は、受けただけでは活きない。「どう使うか」まで考えて初めて意味が出る
- 費用は保険適用で数千円〜、自費で1万〜5万円が相場
もーやんWAIS受けようかなって思ってるんだけど、あれって受けたら何がわかるの?IQが出るんでしょ?



IQも出るけど、大事なのはそこじゃなくて。4つの数字が出て、その数字の間の差が、自分の「得意と苦手の形」を見せてくれる感じかな。自分もそれで「ああ、そういうことだったのか」って思ったことがいくつかあった。



4つの数字って?全体のIQとは違うの?



うん。言葉で考える力とか、作業のスピードとか、4つの領域ごとに数字が出る。その4つの間に差があると「ここでつまずきやすい」が見えてくる。今日はその辺りを整理しようと思う。
この記事では、WAISを受けようか迷っている人に向けて、「何がわかるのか」「費用はいくらか」「結果をどう活かすのか」を整理します。筆者自身がWAIS-IVを受けた体験も交えながら、受ける前に知っておくと不安が減る情報をまとめました。
この記事が向いている人・向いていない人
この記事がどういう方に向いているかを先に整理しておきます。
「向いていない人」に当てはまる場合は、リンク先の記事から読むとスムーズです。
WAISで何がわかるのか ― 大人が知能検査を受ける前の基本知識
WAISの正式名称は「ウェクスラー成人知能検査」で、16歳〜90歳が対象です。ここでは検査で出てくる数字の見方と、よくある誤解について整理します。
WAISは「発達障害の判定テスト」ではない
最初に知っておいてほしいのは、WAISは発達障害かどうかを判定する検査ではないということです。自分の認知能力の「形」を数字で見える化するためのツールと思った方が近いです。
検査で出てくるのは、大きく分けて以下の4つの指標です。
| 指標 | 何を測っているか | 低いとどんな場面で困りやすいか |
|---|---|---|
| 言語理解(VCI) | 言葉を使って考える力。抽象的な概念を理解・説明する力 | 指示の意図が読み取れない、説明がうまくまとまらない |
| 知覚推理(PRI) | 目で見た情報を整理する力。パターンや法則を見つける力 | 地図が読めない、図表の意味が掴みにくい |
| ワーキングメモリ(WMI) | 頭の中で情報を一時的に保持しながら操作する力 | 暗算ができない、話を聞きながらメモが取れない |
| 処理速度(PSI) | 単純な作業を正確にすばやくこなす力 | 入力作業が遅い、テキパキ動くのが苦手 |
4つの指標はそれぞれ独立した認知の側面を測っています。実際の検査報告書にはさらに細かい10個の下位検査の点数も載りますが、まず押さえておきたいのはこの4指標の「形」です。どこが高くてどこが低いかが、自分の得意・苦手のパターンを示してくれます。
大事なのは「全体のIQ」ではなく「4指標の間の差」
WAISを受けると全検査IQ(FSIQ)という総合スコアが出ますが、これだけ見てもあまり情報は得られません。重要なのは4つの指標の間にどれくらい差があるかです。これは「ディスクレパンシー(指標間の差)」と呼ばれます。
たとえば言語理解が130で処理速度が95だったとします。どちらも「平均以上」「平均」の範囲で、単独では問題がないように見えます。でもこの2つの差は35ポイントです。研究によると、こうした指標間の差が大きい結果のパターン(検査では「プロフィール」と呼びます)は、ASD成人では一般の人の約2倍の頻度で見られるとされています。
「IQが高いのに凸凹がある」パターン ― WAIS結果の見方
高機能のグレーゾーンに多いのがこのパターンです。全体のIQは高いのに、特定の指標だけ相対的に低いというケースです。「平均」の範囲なのに、自分の中では「なぜかここだけうまくいかない」になります。
ADHD傾向がある成人を対象にした研究では、ワーキングメモリと処理速度が他の指標より低くなりやすいことが報告されています。この場合、4つ全部を混ぜた全検査IQよりも、言語理解と知覚推理だけで計算した「考える力の指標」の方が高く出る傾向があります。つまり、全体のIQだけ見ると「そこそこ」なのに、考える力だけ見ると「かなり高い」というズレが起きます。
ASD傾向がある成人の場合は、特に処理速度が低くなりやすいとされています。日本人のデータでも、ASD成人は「符号」「記号探し」といった処理速度の課題で低下しやすいことが報告されています。
ただし、ここで注意が必要です。指標間に差があること自体は、発達障害の特性がない人でも普通に見られます。ある研究では、WAISの結果パターンだけでは診断には不十分であることが指摘されています。「凸凹があった=発達障害」ではありませんし、WAISの結果だけで診断は出ません。



全体のIQが高ければ問題ないってわけじゃないんだ。



そう。全体が高くても、中の4つの数字に差があると、そこに引っかかりが出ることがある。たとえば言語理解がすごく高くて処理速度が平均だと、頭の中では「わかってる」のに手が追いつかない、みたいなことが起きたりする。自分もそのパターンだった。
実際にWAIS-IVを受けてみた ― 検査当日から結果フィードバックまで
ここからは筆者自身の体験です。WAISを受けようと思ったきっかけ、当日の様子、結果を聞いたときのことを書きます。
受けようと思ったきっかけ
実際に自分が検査を受けることにした場面を紹介します。
転職して半年くらいのとき。前の会社では「仕事が早い」と言われてたのに、新しい部署ではなぜかミスが増えた。やり方を変えたわけじゃない。上司に「もうちょっと落ち着いてやって」と言われて、自分では落ち着いてるつもりだったから、何を直せばいいのかわからなかった。 同期に「最近どう?」って聞かれて「なんか前よりミス多い気がする」って言ったら、「環境変わったからじゃない?」って。たぶんそうなんだろうと思ったけど、引っかかって、夜にスマホで色々検索した。「仕事 ミス 増えた 転職」とか。そのページの関連記事にADHDがあった。そこからWAISっていう検査があると知って、とりあえず予約した。何がわかるのか正直よくわかってなかった。
検査当日の様子
検査当日の流れも書いておきます。
カウンセリングルームの個室で、心理士さんと1対1。パズルを組んだり、数字を逆から言ったり、「○○と△△の共通点は?」みたいな質問に答えたり。最初は余裕だった。「これ、けっこう簡単だな」と思ってたけど、途中から明らかにスピードが落ちた。 特に数字を聞いて順番を入れ替えるやつ。4桁を超えたあたりから頭の中がぐちゃぐちゃになった。心理士さんが「得意なところと苦手なところの差が大きいかもしれませんね」と言ったのが聞こえて、ちょっとドキッとした。
所要時間は検査本体が1時間半くらいでした。途中休憩はなかったですが、希望すれば取れるそうです。
結果フィードバック
結果を聞いたときの話です。
2週間後にフィードバック。言語理解が130超、処理速度が95。「全体のIQは高いですが、指標間に大きな差があります」と心理士さんに言われた。なるほど、とは思ったけど、「で、これどうすればいいんですか」が正直な感想だった。 心理士さんは「処理速度が低いわけではなく平均なんですが、他が高いので相対的に差が出ている」と説明してくれた。帰りにコンビニでコーヒー買いながら「自分の中での”普通”が、他の人の”普通”と違うってことか」とぼんやり考えてた。
WAIS-IVの費用と受けられる場所 ― 大人が知能検査を受けるには
ここでは費用の相場と、どこで受けられるかの実務情報をまとめます。
費用の相場
| 受け方 | 費用の目安 | 条件・備考 |
|---|---|---|
| 精神科・心療内科(保険適用) | 数千円〜1万円程度 | 医師の指示が必要。初診料は別途 |
| 精神科・心療内科(自費) | 1万〜3万円 | 自費診療のクリニック |
| カウンセリングルーム | 2万〜5万円 | 予約は取りやすい。ただし診断は出ません |
費用は施設によって幅があります。保険適用で受けたい場合は、精神科・心療内科で医師に「WAISを受けたい」と相談するのが最初のステップになります。
どこで受けるか
受ける場所の選び方について、ポイントを整理します。
- 精神科・心療内科
診断につなげたい場合はここです。ただし成人の発達障害に対応しているか、事前に電話で確認した方がいいです。予約から検査まで数ヶ月待ちになることもあります - カウンセリングルーム
診断は不要で「自分の凸凹を知りたい」だけならこちらでも大丈夫です。予約は比較的取りやすく、フィードバックが丁寧な傾向があります。費用は高めです - 大学附属の相談室
臨床心理学科のある大学では、一般向けに検査を受け付けていることがあります。費用は安いですが、時期によっては受付停止の場合もあります
どの場所で受けても、検査自体の内容は同じです。違いは「診断が出るか」「費用」「待ち時間」の3点で、自分が何を求めているかで選ぶのがいいと思います。
WAISの結果をどう活かすか ― 受けるべきか迷っている人へ
検査を受けた後が実は一番大事です。ここでは、結果の数字を「使える知識」に変えるための考え方を整理します。
数字をもらっただけでは「ふーん」で終わる
結果を受け取った後の体験を紹介します。
数字を見てから、仕事の仕方を少し変えた。前は全部頭の中でやろうとしてたけど、「外に書き出せばいいのか」と思って、Notionにタスクを全部出すようにした。先輩に「最近ちゃんとタスク管理してるね」って言われたけど、別にちゃんとしたわけじゃなくて、頭の中だけだと漏れるからメモするようにしただけ。ミスは減ったかどうか正直わからない。でも、「自分がなぜここで詰まるのか」に説明がついたことで、自分を責める回数は減った気がする。
結果を「使える知識」に変えるための3ステップ
結果をもらった後に意識するといいことを3つにまとめます。
- 自分のプロフィール(4指標の形)を把握する
どこが高くてどこが低いのか、その差がどれくらいあるのかを確認します - 低い指標と日常の困りごとを紐づける
処理速度が低めなら「入力作業が遅い」「テキパキ動けない」。ワーキングメモリが低めなら「話を聞きながらメモが取れない」「口頭の指示を忘れる」など - 困りごとごとに対処法を考える
「頭の中でやらずに外に出す」「同時並行を減らす」など、具体的な対処に落とし込みます。ここを一人でやるのが難しければ、専門家と一緒に整理するのも手です
3つ目の「専門家と一緒に整理する」は、検査を受けた場所でフィードバック面談として対応してくれることもあります。それ以外に、オンラインカウンセリングで検査結果を持ち込んで相談する方法もあります。オンラインカウンセリング3社比較
受けなくてもよかったかも、と思う瞬間
正直に書くと、受けた後にこんなことも感じました。
たまに思う。数字を知ったことで、逆に「処理速度が低いから仕方ない」って自分に言い訳してないか、って。新しい仕事を振られたとき「これ、自分の処理速度だと時間かかるかも」と先に考えてしまうことがある。できるかもしれないのに。 後輩に「先輩、資料まとめるの上手いですよね」って言われて引き受けた競合分析のスライド、結局すごく時間がかかった。内容は考えられるのに、図のレイアウト調整で半日使った。数字を知る前なら「まあこんなもんか」で済んでたのに、知った後だと「やっぱり処理速度のせいか」って考えてしまう。
数字は自分を縛るためではなく、「なぜここで詰まるか」の手がかりとして使うものです。それ以上でもそれ以下でもないと、自分に言い聞かせています。
よくある質問 ― WAIS-IVを受ける前に
ここではWAIS-IVについてよく聞かれる質問をまとめます。
まとめ



受けてよかった?



よかったと思う。ただ、数字をもらっただけだと「ふーん」で終わる。「この数字をどう使うか」を一緒に考えてくれる人がいるかどうかで、意味が全然変わると思う。



費用はまあまあかかるけど、自分の取扱説明書がもらえると思えば、そんなに高くもないのかな。



完璧な取扱説明書じゃなくて、「この辺が苦手かも」くらいのざっくりしたものだけどね。それでも、何もない状態とは全然違う。「なんでここで詰まるんだろう」にひとつ説明がつくだけで、自分の扱い方が変わってくると思う。



まずは「何を知りたくて受けるのか」を自分の中で持っておくといいんだね。



うん。それがあるとフィードバックの時に質問もしやすいし、結果を持って帰った後の使い道が全然違う。→ 「がんばってるのに空回りする」の正体
参考文献
- Theiling & Petermann (2016) “Neuropsychological Profiles on the WAIS-IV of Adults With ADHD” — PubMed
- Archives of Clinical Neuropsychology (2023) “Cognitive Profile in Autism and ADHD: A Meta-Analysis of Performance on the WAIS-IV and WISC-V” — Oxford Academic
- 川嶋真紀子ら (2021) “成人の発達障害患者の認知特性 ―WAIS-Ⅳデータによる検討―” — 明治安田こころの健康財団
- Takeda (2020) “Discrepancies in WAIS-III profile in adult with and without ADHD” — Wiley
本記事の情報は公開時点のものです。検査費用や実施状況は施設によって異なります。
本記事は医療上のアドバイスを提供するものではありません。具体的な診断や治療については医療機関にご相談ください。



