この記事のポイント
- ADHDとASDは別物ではなく、ASDのある人の30〜80%にADHD特性が認められるという研究報告がある
- 「不注意なのにこだわりが強い」「衝動的なのに変化が苦手」など、矛盾する特性の同居が併存タイプの特徴
- DSM-5(2013年)以前は併存診断が公式には認められておらず、今の30〜40代で見落とされてきたケースが多い
- 「ADHD向け」「ASD向け」の対処法がそのまま合わないのは、併存の影響かもしれない
- 自分の特性の組み合わせを把握することが、対処の第一歩になる
もーやんADHDのチェックリストやったんだけど、半分しか当てはまらなくて。ASDもやってみたけど、それも半分くらい。どっちも中途半端なんだよね。



自分もそうだった。ADHDの記事読むと「飽きっぽい」が当てはまらないし、ASDの記事読むと「規則正しい」が当てはまらない。どっちかに絞れなくてモヤモヤしてた。



そもそもADHDとASDって全然違うものじゃないの?両方あるってことあるの?



あるんだよね。研究でも併存率はかなり高いと言われてる。昔は「どっちか片方しか診断しない」ルールだったから余計にわかりにくかったんだけど。今日はそのあたりを整理してみようと思う。
この記事では、ADHDとASDの併存について「なぜ矛盾する特性が同居するのか」「なぜこれまで見落とされやすかったのか」を整理します。筆者自身が「どっちの情報も半分しか当てはまらない」状態で混乱した経験を踏まえながら、研究データと合わせてまとめました。
この記事が向いている人・向いていない人
この記事がどういう方に向いているかを先に整理しておきます。
「向いていない人」に当てはまる場合は、リンク先の記事から読むとスムーズです。
「どっちも半分しか当てはまらない」という混乱|ADHD×ASD併存のきっかけ
ADHDとASDの両方の特性が混在している場合、どちらか片方のチェックリストだけでは自分を捉えきれないことがあります。
ここでは、筆者自身が「ADHDの情報を読んでも、ASDの情報を読んでも、しっくりこない」と感じた体験を紹介します。
ADHDの記事が半分しか当てはまらない
実際にチェックリストをやってみたときのことを書きます。
会社の昼休みに「大人のADHDチェックリスト」っていうのを見つけた。やってみた。「物をよくなくす」は当てはまる。この前も社員証を3回なくした。「締め切り直前まで手がつけられない」も当てはまる。提出日の前日に夜中までやるのがいつものパターンだった。
でも「飽きっぽい」は違う。興味あることには何時間でも没頭する。先月、Figmaでデザインシステムのコンポーネント整理を始めたら、気づいたら5時間経ってた。「いろんなことに手を出す」も違う。むしろ決まったことしかやりたくない。
次にASDのチェックリストを見た。「暗黙のルールがわからない」は当てはまる。「雑談が苦手」も当てはまる。でも「規則正しい生活を好む」はまったくできてない。寝る時間は毎日バラバラだし、部屋もぐちゃぐちゃ。
彼女に「どっちも半分くらいだった」って見せたら、「あんたは独自カテゴリなんじゃない?」って笑ってた。笑い事じゃないんだけど。
「ADHDっぽいところ」と「ASDっぽいところ」が混在していて、どちらかひとつに絞れない。これは珍しいことではなく、ADHDとASDの特性が併存しているケースに多く見られるパターンです。
「こだわり」と「不注意」が同居する日常
もうひとつ、仕事の場面で感じた矛盾について書きます。
仕事で使うフォルダの命名規則にはめちゃくちゃこだわってる。日付の書き方、半角全角、ハイフンの位置。全部統一してる。チームのフォルダ構成も自分が整理し直した。
でも、そのフォルダにファイルを保存し忘れる。デスクトップに「名称未設定.fig」が20個くらい並んでる。
同僚に「フォルダの中身めっちゃきれいなのに、デスクトップカオスだね」って笑われた。「わかってるけど、なんか保存するの忘れるんだよね」って言ったら怪訝な顔された。
こだわりが強いのに管理ができない。自分でも何なのかよくわからなかった。
こだわりの強さはASD的な特性、保存し忘れるのはADHD的な不注意。この2つが同時に起きているのが併存タイプの日常です。どちらか一方の枠組みで見ると、必ず「当てはまらない部分」が出てきます。
ADHDとASDの併存はなぜ起きるのか|研究で示されている併存率と遺伝的背景
ADHDとASDの併存は例外的なケースではなく、研究データでは非常に高い割合で報告されています。
「ADHDとASDは正反対のもの」と思っている人は多いかもしれません。実際、自分も最初はそう思っていました。でも、研究の世界ではこの2つの重なりはかなり前から注目されています。
ASDのある人の30〜80%にADHD特性が見られるという報告がある
ADHDとASDの併存に関するレビュー研究では、ASDと診断された人の30〜80%にADHD特性が認められると報告されています。逆方向(ADHDと診断された人にASD特性が見られる割合)も20〜50%とされています。数字に幅があるのは、調査方法や対象者の年齢層、「特性あり」と判定する基準が研究ごとに異なるためです。
いずれにしても「どちらか片方だけ」の人より「両方の特性を持っている」人の方が、想像以上に多いということです。同じ研究では、ADHDとASDが併存する場合、それぞれ単独の場合と比べて社会的な場面での困難がより大きくなることも指摘されています。
遺伝的な基盤が重なっている
「なぜ併存するのか」について、遺伝的な研究も進んでいます。ADHDとASDの遺伝的基盤には重なりがあるとする報告があり、家族内でADHDとASDが共起しやすいことが疫学データで示されています。
たとえば、親がADHDの特性を持っている家庭で、子どもにASD的な特性が見られるケースや、その逆のパターンが報告されています。2つの特性が「まったく別の原因で偶然重なった」のではなく、共通する遺伝的背景がある可能性を示す研究です。
DSM-5以前は併存診断ができなかった
ここがとても重要なポイントです。2013年にDSM-5(アメリカ精神医学会の診断マニュアル第5版)が出るまで、ADHDとASDの併存診断は公式には認められていませんでした。
DSM-IV-TR(2000年版)では、ASDの診断がついている場合はADHDの診断を除外するルールがありました。つまり「ASDの人はADHDとは診断しない」という時代があったのです。
これは今の30代後半〜40代にとって大きな影響があります。子どもの頃に受診していた場合、旧基準で「ADHDだけ」または「自閉症スペクトラムだけ」と判断されていた可能性があるからです。本当は両方の特性があったのに、当時の基準では片方しか認められなかった。



え、つまり昔は「両方ある」って言えなかったの?



そう。2013年に基準が変わるまでは、ADHDとASDを同時に診断するのはルール上できなかった。だから「どっちか片方だけ」で判断されてきた人がけっこういるはず。自分が子供の頃の基準がまさにそれだった。



今は両方つくようになったんだ。



うん。DSM-5で正式に認められた。ただ、大人になって初めて受診する場合は「そもそも子どもの頃の記録がない」ケースが多いから、併存が見えにくいのは今でも変わらないかもしれない。
矛盾する特性が同居するパターン|ADHD×ASD併存の具体的な特徴
ADHDとASDの特性が同時に存在すると、一見矛盾するような行動パターンが日常のあちこちに現れます。
ここでは、併存タイプに特徴的な「矛盾」のパターンを具体的に整理します。どちらか片方の特性だけでは説明がつかない行動に心当たりがある場合、併存の視点から見直すと整理しやすくなるかもしれません。
矛盾パターンの一覧
以下のような場面に覚えがある人は、併存タイプの可能性を検討する価値があります。
| 場面 | ADHD的な側面 | ASD的な側面 | 本人の内側で起きていること |
|---|---|---|---|
| タスク管理 | ファイル保存を忘れる、書類が散乱 | フォルダ命名規則は完璧に統一 | こだわりたいのに不注意で維持できない |
| 時間感覚 | 時間を忘れて過集中する | 予定変更にパニックになる | 「自分で崩すのはOK、他人に崩されるのは無理」 |
| 対人場面 | 衝動的に余計なことを言う | 暗黙のルールが読めずに黙り込む | 場面によって「喋りすぎ」と「喋らなすぎ」が入れ替わる |
| 興味関心 | 新しいものにすぐ飛びつく | 一度ハマると何年も同じものに固執 | 「広く浅く」と「狭く深く」が共存 |
| 感覚 | 刺激を求める(音楽を大音量で聴く等) | 感覚過敏で特定の音が耐えられない | 自分が選んだ刺激はOK、不意の刺激は無理 |
ポイントは、これらの矛盾が「性格のムラ」ではなく、異なる神経基盤に由来する特性の重なりだということです。ADHDの「実行機能の困難」とASDの「感覚・社会認知の特性」が、場面ごとに別々に作用しています。
「打ち消し合い」と「増幅」
併存タイプでは、2つの特性が打ち消し合って一見「普通」に見える場合と、互いに増幅して困難が大きくなる場合があります。
ADHDとASDが併存する場合、それぞれ単独の場合とは異なる認知プロフィールを示すことが研究で報告されています。特に実行機能(段取りをつける、計画する、切り替えるなどの力)の困難は、ADHD単独の場合より重くなるケースがあるとされています。
打ち消し合いの具体例を挙げると、たとえばASDの「ルーティンへのこだわり」がADHDの「先延ばし」を抑え込んでいるケースがあります。「毎朝この順番でやる」が決まっていると朝の準備は問題なくできるけれど、ルーティンが崩れた瞬間にすべてが止まる。周囲からは「普段ちゃんとできてるじゃん」と言われるので、崩れたときの苦しさが理解されにくくなります。
増幅の例では、ASDの「変化への不安」とADHDの「衝動性」がぶつかって、「新しいことを始めたい気持ちと始められない不安」が同時に存在して身動きが取れなくなるパターンがあります。
主治医に「両方ありそう」と言われた日
筆者自身が「併存」に気づいたときの体験を紹介します。
心療内科に半年くらい通っていたときのこと。先生に「ADHDの傾向と、ASDの傾向と、両方ありそうですね」と言われた。
「両方あるんですか?」って聞いたら、「珍しくないですよ。昔は同時に診断できなかったんですけど、今は認められてます」と。
帰りの電車で調べた。2013年に診断の基準が変わったらしい。自分が子供の頃は、ADHDとASDを同時に診断するルールがなかったということ。
正直、ちょっとスッキリした。ADHDのチェックリストが半分しか合わなくて、ASDも半分しか合わなくて、ずっと「自分は何なんだろう」って思ってたから。「両方ある」って言われて、合わなかった理由がわかった気がした。
翌週、彼女に「両方の傾向があるらしい」って話したら、「だからフォルダはきれいなのにデスクトップ汚いの?」って。まあ、たぶんそういうことなんだろうなと思った。
「両方ある」と言われて楽になったのは、片方だけの情報に自分を当てはめようとする必要がなくなったからです。ただし、これは筆者個人の体験であり、併存かどうかの判断は医療機関での評価が必要です。
「ADHD向け」の対処法がうまくいかない理由|併存タイプの実生活への応用
ADHDとASDが併存している場合、片方の特性だけに合わせた対処法では効果が出にくいことがあります。
ここでは、併存タイプが対処法を選ぶときの考え方と、特性の組み合わせに合わせた工夫について整理します。
ADHD向けの対処法が合わないケース
ADHD向けの情報でよく紹介される対処法の中で、ASD特性がある人にはかえって逆効果になりうるものがあります。
- 「環境を頻繁に変えて飽きを防ぐ」
ASD特性がある人は変化にストレスを感じやすいため、環境をコロコロ変えると逆に消耗する - 「やることリストを柔軟に変更する」
ASD的なこだわりがある人にとって、リストの変更自体がストレス源になりやすい - 「ご褒美で動機づけする」
ASD特性がある人は外発的な動機づけが効きにくいことがあり、内発的な関心に基づく方が持続する
逆に、ASD向けの「ルーティンを完璧に組んで守る」という対処法も、ADHD的な不注意や衝動性があると維持が難しくなります。どちらか片方のアプローチだけでは、もう片方の特性が足を引っ張るのです。
併存タイプの対処法の考え方
大事なのは「ADHD向け」「ASD向け」のどちらかを選ぶのではなく、自分の中でどの特性がどの場面で強く出るかを把握して、場面ごとに対処を切り替えることです。
以下のように整理すると、自分に合った対処が見えやすくなります。
- ルーティンは「ゆるく固定」する
完璧に組むとADHD側が崩す。大枠だけ決めて中身に余白を持たせると続きやすい - 変化は「予告付き」にする
自分から変えるのはOKでも、不意の変化はストレスになる。予定変更は前日までに確認するなど、バッファを設ける - 過集中をルーティンに組み込む
「この時間は好きなことに没頭してOK」という枠を作ると、ASD的な没頭とADHD的な刺激欲求の両方が満たされる - 「こだわりポイント」は活かして、「管理」は仕組みに任せる
フォルダ構成のこだわりは維持する。ファイル保存は自動バックアップに任せる。得意と苦手を分離する
ただし、これらは「こういう工夫がある」という例であって、全員に合う万能の対処法ではありません。自分の特性の組み合わせは一人ひとり違うので、試して合わなければ別のやり方に切り替えていいです。
特性の組み合わせを整理するのは一人では難しい
併存タイプの厄介な点は、自分の中で「今ADHD側が出てるのか、ASD側が出てるのか」を切り分けるのが非常に難しいことです。特に困っている最中は、冷静に分析する余裕がありません。
こういうときに、自分の特性の棚卸しを第三者と一緒にやるのはひとつの方法です。カウンセラーと話しながら「この場面ではADHD的な不注意が主因で、この場面ではASD的なこだわりが関係してる」と整理していくと、自分では気づけなかったパターンが見えてくることがあります。
対面が難しい場合はオンラインカウンセリングを使う手もあります。「併存タイプかもしれない」と最初に伝えれば、そこを踏まえた相談ができます。もう少し具体的にサービスを比較したい場合は オンラインカウンセリング3社比較 も参考にしてください。
よくある質問|ADHDとASDの併存に関するFAQ
ここでは、ADHDとASDの併存についてよく検索されている疑問をまとめます。
まとめ|ADHDとASDの併存を知ることで楽になること



ADHDの情報もASDの情報も半分しか合わない理由、なんかわかった気がする。そもそも両方の特性があるなら、片方だけの情報で全部説明できるわけないよね。



うん。「自分は何なのか」にこだわって一つに絞ろうとするから混乱するんだよね。自分もそうだった。「ADHDか、ASDか」じゃなくて「ADHDのどこが当てはまって、ASDのどこが当てはまるか」で見た方がスッキリした。



でも、併存って対処が難しそうだね。片方向けの方法じゃダメなんでしょ?



難しいけど、無理じゃないと思う。自分がどの場面でどっちの特性が強く出てるかを把握できれば、対処の精度は上がる。そこを一人で整理するのが難しければ、カウンセラーに手伝ってもらうのも手だと思う。



まずは「両方あるかも」って視点を持つだけでもだいぶ違うかもね。



それだけで十分な一歩だと思う。「どっちなんだろう」で止まってた人が「両方かもしれない」って思えたら、情報の拾い方が変わるから。
参考文献
- Antshel, K. M., et al. (2016) “Autism Spectrum Disorder and ADHD: Overlapping Neuroanatomy, Shared Cognitive Mechanisms, and Clinical Implications” — PubMed
- Rommelse, N. N. J., et al. (2011) “Shared heritability of attention-deficit/hyperactivity disorder and autism spectrum disorder” — PubMed
- American Psychiatric Association (2022) DSM-5-TR
- Leitner, Y. (2014) “The Co-Occurrence of Autism and Attention Deficit Hyperactivity Disorder in Children – What Do We Know?” — PubMed
本記事の情報は公開時点のものです。発達障害の診断基準や支援制度は変更される場合があります。
本記事は医療上のアドバイスを提供するものではありません。具体的な診断や治療については医療機関にご相談ください。








