この記事のポイント
- 大人のADHDの相談は、オンライン診療でも始められる。ただし診断を確かめるには、子どもの頃の様子の聞き取りや評価尺度・心理検査などが必要で、1回の診察では決まらないことが多い
- ADHDの薬のうち中枢刺激薬は、登録した医師・薬局だけが扱える特別な管理の対象で、オンライン診療だけで新たに処方されることは期待できない
- それ以外の薬も、オンラインの初診では、持病や服薬歴が医師に伝わっていないと処方が制限される
- オンラインは「相談を始める入口」として使い、評価や薬の本格的な検討は対面で、と分けて考えると迷いにくい
もーやんADHDあるあるの動画が当てはまりすぎて…。病院に行くほどかわからないけど、スマホで相談ってできるの?薬ももらえたら楽なんだけど。



相談を始めることはオンラインでもできるよ。ただ、大人のADHDの診断は1回の診察で決まることは少ないし、薬は国のルールでかなり線が引かれてる。だから「オンラインで何をして、対面で何をするか」を分けて考えるほうが、結果的に早いと思う。
この記事では、大人のADHDがオンライン診療でどこまで相談できるのかを整理します。私自身が初めて「ADHDかもしれない」と医師に話したときの体験から入り、専門的に診断がどう決まるのか、オンライン診療のルールで何ができて何ができないのかを、出典をつけて説明します。
診断や治療を勧める記事ではありません。受診を考えるときの判断材料として読んでください。
この記事が向いている人・向いていない人
この記事がどういう人の役に立つかを先に整理しておきます。
受診するかを決める前の人も、「受診するなら何から始めるか」を知る目的なら使えます。
結論|大人のADHDはオンライン診療で相談できる。診断の評価と中枢刺激薬は対面が前提
大人のADHDは、オンライン診療でも相談を始められます。一方で、診断を確かめるための評価や、中枢刺激薬の処方は、対面の診療が前提になると考えておくのが現実的です。
オンラインでできること・できないことを、先に一覧にしておきます。
| やりたいこと | オンライン | 補足 |
|---|---|---|
| 困りごとを医師に相談する | できる | 仕事のミス、段取り、集中の問題などから話せる |
| 眠れない・落ち込みなどの不調を相談する | 条件つき | 相談はできる。ただし睡眠薬・抗不安薬の多くは向精神薬で、その症状で対面診療を受けていないとオンラインでは処方されない。手当ての内容は医師が判断する |
| ADHDの診断を確かめる | 一部のみ | 子どもの頃の様子の聞き取りはできるが、心理検査などは対面になることが多い |
| 中枢刺激薬(管理がとくに厳しいタイプの薬)の処方 | できない | 登録制の特別な管理と、向精神薬・覚醒剤原料の規制の対象 |
| それ以外のADHDの薬 | 条件つき | 初診で持病や服薬歴が伝わっていないと処方できない。日数にも上限がある |
| 診断書 | 医師の判断による | 休職などの診断書に対応するサービスもある |
表の理由は、この後の「大人のADHDの診断はどう決まるか」と「オンライン診療のルール」で順番に説明します。
最初に「ADHDかもしれない」と話した日|私の場合
私の場合、最初の相談は対面の一般的な精神科で、その日に診断がつくことはありませんでした。
オンラインでどこまでできるかを考える前に、ADHDの相談が実際にどう進むのかを、自分の体験で書いておきます。
眠れなくて行った精神科で、最後に「あと、ADHDかもしれないと思っていて」と言った。言うつもりはなかった。
先生は少し考えてから、「子どもの頃の通知表って残ってますか」と聞いた。
その夜、実家の母に電話した。「通知表?押し入れのどこかにあると思うけど、なんで」と言われた。病院でちょっと聞かれて、とだけ言った。
次の診察では、質問票を2枚渡されて、待合室で書いた。「検査もしたほうがいいですね、ここではやっていないので」と、別の病院の名前を言われた。
帰りの電車で、言われた病院の名前をスマホで調べた。検査の予約は2ヶ月後だった。
振り返ると、最初の診察でできたのは「困りごとを話すこと」と「眠れない不調の相談」でした。診断に必要な材料集めは、その後の何回かの診察と、別の医療機関での検査を通して進みました。この流れは、専門的な整理ともおおむね一致しています。
大人のADHDの診断はどう決まるか|1回で決まりにくい理由
大人のADHDの診断では、今の困りごとだけでなく、子どもの頃から症状があったか、複数の場面で起きているかを確かめる必要があるため、1回の診察で決まることは多くありません。
ここからは、専門的にどう整理されているかを説明します。
診断基準が求めていること
米国精神医学会の診断基準(DSM-5-TR)では、ADHDの診断にあたって、主に次のような点が確認されます。
- 症状の数と続いている期間
不注意か多動・衝動性の、どちらかの症状が一定数以上あり(17歳以上は5項目以上)、6ヶ月以上続いていること - 子どもの頃からあったこと
いくつかの症状が12歳になる前から存在していたこと - 複数の場面で起きていること
職場だけ、家だけではなく、2つ以上の場面で症状が見られること - 生活や仕事に支障が出ていること
症状があるだけでなく、仕事や人間関係、生活に実際の支障が出ていること - ほかの原因で説明できないこと
うつ病や不安、睡眠の問題など、ほかの状態のほうがよく説明できる場合は区別する
「子どもの頃からあったこと」と「ほかの原因で説明できないこと」が、1回の診察で決まりにくい理由です。傾向はあっても支障の程度が基準に届かない場合、「グレーゾーン」と言われることがあります。子どもの頃の様子は、本人の記憶だけでは曖昧なことが多く、通知表や母子手帳、家族からの聞き取りが材料になります。また、眠れない・気分が落ち込んでいるといった状態でも、集中しにくさや物忘れは起きるので、それとの区別が必要になります。
質問票は「入口」で、診断そのものではない
世界保健機関(WHO)の成人ADHD自己記入式スクリーニング尺度(ASRS)のように、大人のADHDの傾向を確かめる質問票があります。こうした質問票は、ADHDの可能性がある人を見つけるための「ふるい」として作られたもので、それだけで診断が決まるわけではないとされています。
成人のADHDは、大人のおよそ2.5%にみられるという研究があります。決して珍しくはない一方で、「質問票で当てはまった=ADHD」ではない、という点は押さえておきたいところです。自分の傾向を整理したい場合は、大人の発達障害セルフチェック【本格版】 も使えます。
心理検査は「凸凹」を見るためのもの
WAIS(ウェクスラー成人知能検査)などの心理検査は、ADHDかどうかを直接判定する検査ではなく、得意・不得意の偏りを把握するためのものです。医療機関によっては、診断の材料の一つとして使われます。検査には時間がかかり、対面で行うのが一般的です。検査の中身は 大人のWAIS-IV — 受ける前に知っておきたいこと にまとめています。



オンラインで1回話せば診断がつくと思ってた。



そう思っちゃうよね。でも、子どもの頃のことを確かめたり、ほかの不調と区別したりするのに、どうしても時間がかかる。逆に言えば、1回で決まらないのは普通のことなんだと思う。
オンライン診療のルール|ADHDの薬で何ができて、何ができないか
オンライン診療では、国の指針と医療法施行規則によって、初診で出せる薬が制限されています。ADHDの薬もその対象で、中枢刺激薬はオンライン診療だけで新たに処方されることは期待できず、それ以外の薬も初診では条件がつきます。
ひとことで言うと、オンラインでは相談はできても、ADHDの薬は初回からは出にくい、ということです。誤解が多いところなので、ルールを分けて説明します。薬の名前ではなく、種類で書いています。
中枢刺激薬は、登録制の特別な管理の対象
ADHDの薬のうち中枢刺激薬(脳の働きに直接作用するタイプの薬)は、乱用や不正な流通を防ぐため、「ADHD適正流通管理システム」に登録した医師と薬局しか扱えず、処方を受ける患者も登録が必要です。さらに成分によって、向精神薬や覚醒剤原料にも指定されています。
オンライン診療については、厚生労働省の指針で初診での向精神薬の処方が認められておらず、2026年4月からは医療法施行規則で、その症状について対面診療を受けていない限り、再診でも向精神薬を処方できないと定められました。中枢刺激薬を検討する段階になったら、対面の診療が前提になると考えておいてください。
それ以外の薬も、初診では条件がつく
中枢刺激薬ではないADHDの薬もあります。ただし、厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、オンラインの初診で次の処方をしないことになっています。
- 麻薬と向精神薬
中枢刺激薬のほか、一般的な睡眠薬や抗不安薬の多くもここに入る - 持病や服薬歴がわからない人への「特に安全管理が必要な薬」
診療報酬で特別な管理が求められている区分で、ADHDの薬や抗うつ薬を含む精神神経用剤もここに入る - 持病や服薬歴がわからない人への8日分以上の処方
初診の処方は7日分までが基本になる
つまり、中枢刺激薬ではないADHDの薬でも、オンラインの初診で、持病や服薬歴の情報が医師に伝わっていない場合は処方されません。お薬手帳や、ほかの医療機関での診断・治療の情報があれば、医師が判断する材料になります。
グレーゾーンの人のオンライン診療の使い方|3つのパターン
診断が確定していないグレーゾーンの人にとって、オンライン診療は「相談を始める」「今の不調を相談する」「対面までのつなぎにする」の3つの使い方が現実的です。
診断を急ぐより、困りごとを医師に話し始めることのほうが、結果的に前に進みやすいと私は感じています。使い方を3つに分けて整理します。
使い方1|専門外来を待つあいだに、相談を始める
発達障害の専門外来は、初診まで数ヶ月待ちのことも少なくありません。そのあいだ、一般的な精神科・心療内科の医師に困りごとを話し始めておくと、子どもの頃の様子の整理や、検査が必要かどうかの見通しが早くつきます。
平日の昼に通院できない人にとっては、夜や土日に受診できるオンライン診療が、この「最初の相談」の場所になります。受診する前に、困っている場面を書き出しておくと話しやすくなります。書き出し方は 「自分は発達障害かも」と思ったら最初にやること にまとめています。
たとえば保険適用のオンライン診療サービス「エニキュア」は、朝8時〜24時、土日も診療しています。公式FAQでは、大人のADHDについて「仕事でのミスが多い」「段取りが苦手」といった段階から相談でき、発達検査が必要な場合は対面の医療機関を案内することがあると説明されています。
朝8時〜24時・土日も。当日の空き枠から予約できる
使い方2|ADHDより先に、今つらい不調を相談する
ADHDの傾向がある人は、環境との合わなさが続いた結果として、眠れない、気分が落ち込む、燃え尽きるといった不調を抱えていることがあります。こうした不調は「二次障害」と呼ばれることがあります。こうした不調があると、集中しにくさも強く出るので、ADHDの評価そのものが難しくなります。
先に今の不調を相談してから、落ち着いた状態で特性の評価を受けるという順番も、十分に理にかなっています。ただし、睡眠薬・抗不安薬の多くは向精神薬なので、オンラインだけでは処方されません。薬が必要かどうかも含めて、医師と相談しながら進めることになります。二次障害の整理は 大人の発達障害の二次障害を整理|うつ・不安・バーンアウト・身体症状の4軸と受診判断 に書いています。
使い方3|対面の検査や専門外来へのつなぎにする
オンラインで相談を始めた結果、心理検査や、中枢刺激薬の検討が必要になった場合は、対面の医療機関に移ります。オンラインで話した内容や、集めた子どもの頃の様子の材料は、対面の初診でもそのまま役に立ちます。
同じグループに対面のクリニックがあるオンライン診療サービスなら、移るときの負担も小さくなります。そうしたサービスの一例は エニキュアの評判・口コミは?保険適用でも初診5,000円超の理由と向かない人を整理 で詳しく整理しています。保険のオンライン・自費のオンライン・対面の違いは 心療内科・精神科のオンライン診療は保険適用?費用の内訳と自費・対面との違い で比べています。



診断を先に取らなきゃって焦ってたけど、順番を変えてもいいんだね。



うん。困りごとを話し始めることと、今の不調を相談することは、診断がなくてもできる。そこから先は、必要になったら対面に進めばいいと思う。
やらない方がいいこと
オンラインでADHDの相談をするときは、薬を目的に受診先を選んだり、質問票の結果だけで結論を出したりしないほうが安全です。
診断を急ぎたい気持ちは自然なものです。ただ、焦っているときほど、次のような行動で遠回りになりやすくなります。
- 特定の薬が欲しくて受診先を探し回る
オンラインでは出せない薬がある。薬を検討する段階なら、対面の受診を考える - 質問票の結果だけで自分をADHDと決める
質問票はふるいで、診断ではない。ほかの不調が原因のこともある - 複数のオンライン診療を掛け持ちする
医師が経過を追いにくくなり、薬が重なる危険もある
とくに最後の2つは、診断を急ぐ気持ちから起きやすい行動です。相談する医師を一人決めて、経過を見てもらうほうが、結果的に早く進みます。
よくある質問(FAQ)
まとめ|急ぐべきは診断ではなく、困りごとを話し始めること



オンラインで全部済むと思ってたけど、使い分けなんだな。



そう。オンラインは相談の入口。評価や薬の本格的な検討は対面。そう分けておけば、何を期待していいかがはっきりすると思う。



まずは困ってる場面を書き出すところからやってみる。



それが一番の近道だと思う。話してみて合わないと感じたら、医師を変えてもいい。診断がつくかどうかは、そのあとでいいんじゃないかな。
大人のADHDは、オンライン診療でも相談を始められます。ただ、診断を確かめるには子どもの頃の様子や複数の場面での困りごとを確認する必要があり、1回の診察で決まることは多くありません。中枢刺激薬はオンライン診療だけでは新たに処方されず、それ以外の薬も初診では条件がつきます。今日からできるのは、次の3つです。
- 困っている場面を3つメモする
仕事、家、人間関係など、場面を分けて書く - 子どもの頃の通知表や母子手帳があるか確認する
家族に聞くのが難しければ、覚えていることだけでもいい - 今つらい不調があれば、医師に相談する
対面が先ならオンラインで始めてもいい
どれも、診断がつくかどうかに関係なく役に立つ準備です。
- 診断を受けるかどうか迷っている方:グレーゾーンから診断受診へ|判断基準と選択肢
- 心理検査(WAIS)について知りたい方:大人のWAIS-IV — 受ける前に知っておきたいこと
- 保険・自費・対面の受け方を比べたい方:心療内科・精神科のオンライン診療は保険適用?費用の内訳と自費・対面との違い
- 保険適用のオンライン診療サービスを知りたい方:エニキュアの評判・口コミは?保険適用でも初診5,000円超の理由と向かない人を整理
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参考文献
- American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition, Text Revision (DSM-5-TR). 2022.
- Simon V, Czobor P, Bálint S, Mészáros A, Bitter I. (2009) “Prevalence and correlates of adult attention-deficit hyperactivity disorder: meta-analysis” British Journal of Psychiatry 194(3):204-211 — PubMed
- Kessler RC, et al. (2005) “The World Health Organization Adult ADHD Self-Report Scale (ASRS): a short screening scale for use in the general population” Psychological Medicine 35(2):245-256 — PubMed
- 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(令和8年4月改訂) — 厚生労働省
- 厚生労働省 事務連絡(令和8年4月21日)疑義解釈資料 問16(医療法施行規則第9条の6の13第3項) — 厚生労働省
- 日本医学会連合「オンライン診療の初診に関する提言」(2021年6月) — 厚生労働省掲載資料
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」電話相談窓口 — 厚生労働省
- エニキュア公式サイト(よくある質問)
本記事の情報は公開時点のものです。発達障害の診断基準やオンライン診療の制度は変更される場合があります。
本記事は医療上のアドバイスを提供するものではありません。具体的な診断や治療については医療機関にご相談ください。









