この記事のポイント
- 落ち込みが続く原因は「身体」「認知」「環境」の3層に分けると切り分けやすい
- 身体の層から確認するのは、費用が低く、数値という客観的な結果が出るため
- 血液検査で確認されることが多いのはフェリチン・ビタミンD・ビタミンB12。甲状腺機能は医療機関の領域
- 数値に問題がないのに続く場合、考え方のクセや環境の負荷を見る段階になる
- 死にたい気持ち、2週間以上の支障、眠れない・食べられないが続く場合は切り分けより受診が先
もーやん特に何かあったわけじゃないのに、ずっと気分が重い。



「理由がないのに落ち込む」って、実は理由が見えてないだけのことが多いんだよね。



どうやって探すの。



3つの層に分けて考えるのがいいと思う。身体、考え方、環境。この順番で見ていくと切り分けやすい。



なんで身体からなの?



安いし、血液検査で数値が出るから。考え方や環境って自分では判断しにくいけど、鉄が足りてるかどうかは測れば分かる。分かるものから潰したほうが早い。
この記事では、気分の落ち込みが続くときの原因を3つの層に分けて整理します。それぞれで何を確認し、何が確認できたら次に進むのかをまとめました。
原因を特定して終わりにする記事ではありません。どこから手をつけるかを決めるための整理です。
この記事が向いている人・向いていない人
先に、この記事が誰の役に立つかを整理しておきます。
向いていない人に該当する場合でも、3層の整理は状況の把握に使えます。
落ち込みが続くときに見る3つの層
気分の落ち込みには、身体・認知・環境という3つの入口があります。どれか1つとは限らず、複数が重なっていることのほうが多くなります。
原因を1つに決めようとすると行き詰まります。層に分けて、それぞれ確認できるものから確認していく形が現実的です。
| 層 | 内容 | 確認の方法 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|
| 身体 | 栄養状態・睡眠・血糖の変動 | 血液検査・睡眠の記録 | 数千円〜1万円台 |
| 認知 | 出来事の受け取り方のパターン | 書き出して検討する/専門家と扱う | 0円〜月1万円前後 |
| 環境 | 業務量・人間関係・音や視界の負荷 | 消耗する場面の記録 | 0円 |
この表の順番には意味があります。上から順に「自分で客観的に確認しやすい」順に並んでいるためです。
なぜ身体の層から確認するのか
身体の層は、費用が低く、結果が数値として出ます。この2点で、他の層より切り分けの効率が高くなります。
考え方のクセや環境の負荷は、自分では評価しにくいものです。「自分の受け取り方が偏っているか」を自分で判断するのは構造的に難しく、「この業務量は多いのか」も比較対象がなければ分かりません。
一方、フェリチンが基準を下回っているかどうかは測れば分かります。分かるものから確定させていくと、残った領域が絞り込まれます。
もう1つの理由は、身体の層が他の層の評価に影響することです。睡眠が崩れている状態では、考え方のクセを扱っても効果が観測できません。土台を先に確認しておくと、後の判断の精度が上がります。
身体の層|確認されることが多い項目
メンタルまわりで確認されることが多いのは、フェリチン・ビタミンD・ビタミンB12、そして甲状腺機能です。
会社の健康診断の標準項目には入っていないことが多いため、意識して追加するか、別に測る必要があります。
フェリチン(貯蔵鉄)
ヘモグロビンが基準内でも、貯蔵鉄であるフェリチンが低いことがあります。いわゆる「隠れ貧血」と呼ばれる状態です。
ADHDのある子どもを対象とした研究では、血清フェリチンが低い群で症状との関連が報告されています。またメタ解析でも鉄の状態との関連が検討されています。ただしこれは「鉄が足りていない人」についての話であって、足りている人が鉄を足せば良くなるという構造ではありません。
補うかどうかは、測ってから決める領域です。詳しくは フェリチン不足と不注意|「ADHDかも」の前に血液検査でやるべき切り分け にまとめています。
ビタミンD
日本人はビタミンDが不足しやすいことが国の調査でも示されています。ただしこれは集団の傾向であって、自分がそうであることの証明にはなりません。
日照時間の短い時期に調子が落ちる自覚がある場合は、確認する価値のある項目です。詳しくは ビタミンD不足とADHD・ASDの関係|日本人8割が不足する「集中できない」「冬に落ち込む」の栄養切り分け で整理しています。
ビタミンB12
ビタミンB12の補充と、認知機能・抑うつ症状・疲労の関係を検討したシステマティックレビューがあります。結論としては一律に効果があるというものではありませんが、不足している場合には確認しておく価値のある項目です。
甲状腺機能|これは医療機関の領域
甲状腺の機能が低下すると、気分の落ち込みや疲労感として現れることがあります。これはサプリで扱う領域ではありません。
倦怠感、寒がり、体重の増加、むくみといった身体症状を伴う場合、医療機関で確認される項目です。ここに該当する可能性がある場合、切り分けの手順を進めるより受診が先になります。
測る手段
医療機関での血液検査が基本です。健康診断のオプションとして追加できる場合もあります。自宅で採取して郵送する検査キットという選択肢もあり、費用と測定項目の違いは 自分で測れる血液・栄養検査キット比較|病院で測ってくれない項目を郵送で で比較しています。
不足が確認できた場合、その成分に絞って補うことになります。海外製品の価格や品揃えを見る場合は iHerb(サプリ総合) が選択肢になります。すでに複数のサプリを試していて変化がない場合は、サプリの効果が実感できないのはなぜ?|3ヶ月試して変わらないときに疑う4つの原因と次の一手 で原因の切り分け方を整理しています。



測ってみて、全部基準内だったらどうするの。



それはそれで大きい情報だと思う。「栄養じゃない」って確定するから、残りの2つに集中できる。
認知の層|出来事の受け取り方のパターン
同じ出来事でも、どう受け取るかによって残るダメージは変わります。ここが2つ目の層です。
会議で意見が通らなかったとき、「案が弱かった」と考える場合と「自分は必要とされていない」と考える場合では、その日の終わりに残るものが違います。後者が習慣になっていると、特別な出来事がなくても消耗が積み上がります。
「理由がないのに落ち込む」の正体が、この層にあることは珍しくありません。理由がないのではなく、日々の小さな受け取り方が積算されている状態です。
代表的なパターン
- 結論の飛躍
返信が遅いだけで「怒らせた」と判断する。確認していない解釈が事実として処理されます - 全か無かの評価
1つうまくいかないと全体が失敗だったことになる。中間の評価が残りません - 自分に帰属させる
チームの停滞を自分の問題として引き受ける。他の要因が視界に入りにくくなります - 反芻
終わった場面を繰り返し再生する。考えているようで、結論は出ません
反芻の扱い方については ADHD/ASDの大人が過去を反芻してしまう3パターン整理|ぐるぐる思考・自責の止め方 で詳しくまとめています。
この層が扱いにくい理由
自分の受け取り方は、自分にとって意見ではなく事実として認識されています。
「自分は必要とされていない」は、頭の中では状況の説明として処理されています。意見だと認識できていないものを、意見として検討し直す。これが一人では難しい作業になります。
血液検査なら数値が基準を外れているかどうかが分かりますが、受け取り方には基準値がありません。ここが身体の層との決定的な違いです。
認知行動療法が扱う範囲
認知行動療法(CBT)は、この受け取り方のパターンを書き出して検討し直す手順を持っています。厚生労働省が治療者用のマニュアルを公開しており、技法自体は公開されたものです。
代表的なコラム法では、落ち込んだ場面、そのとき浮かんだ考え、その考えを支持する事実と支持しない事実、別の見方を順に書き出します。手順は決まっているので、書籍を使って一人で試すこともできます。
ただし多くの人が「別の見方」の欄で止まります。専門家が入ると、ここに「そう分かったのはどの場面でしたか」といった質問が入り、事実と解釈の境目に線が引かれます。
オンラインで認知行動療法に取り組めるサービスとしては マインドバディ|専門家×AIのオンライン認知行動療法プログラム があります。公認心理師・臨床心理士との面談(Zoom・1回30分)に加えて、コラム法などのワークとPHQ/GADによる状態測定が月額に含まれる構成です。料金は月額1,980円から14,980円(税抜)で、面談回数によって分かれます。
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環境の層|負荷そのものが原因のとき
受け取り方の問題ではなく、単に負荷が過大であるという場合があります。これが3つ目の層です。
業務量が処理できる範囲を超えている、裁量がない、割り込みが多い、音や視界の刺激が多い。こうした条件下では、受け取り方を調整しても消耗は続きます。
環境の層を疑うサイン
休日や長期休暇に入ると数日で気分が戻る場合、環境の負荷が主な要因である可能性が高くなります。逆に、仕事から離れていても状態が変わらない場合は、環境以外の要因を見る段階です。
この見分け方は、自分でも比較的判断しやすい部分です。
環境を変える手段
物理的な環境については オフィスで集中できない人の生存戦略|音・視界・割り込みを切り分ける環境戦略 で、職場での配慮の求め方については 発達障害を職場で言わずに配慮を得る方法|診断がなくても働きやすくする3つの現実策 で整理しています。産業医面談や職場のEAPは、この層の相談先として使えます。
実際にあった場面|3連休で戻ったとき
環境の層に気づいたときのことを書いておきます。
2ヶ月くらい、朝起きた瞬間から重い日が続いていた。特に何かあったわけではない。
3連休の2日目に、朝起きて普通だったことに気づいた。前の日も普通だったかもしれない。
連休明けの月曜、通勤電車の途中でまた重くなった。オフィスに着く前だった。
そのとき初めて、自分の問題ではなく場所の問題かもしれないと思った。それまでは体調だと思っていた。
週明けに席替えの相談をした。窓側の端に移った。全部は解決しなかったけど、午後の消耗は減った。
離れると戻るかどうかは、自分で観察できる数少ない手がかりです。
3層の切り分けフロー
確認しやすいものから順に潰していくと、残った層が対処の対象になります。
順番をまとめます。
- 1. 受診ラインに該当しないか確認する
死にたい気持ち、2週間以上の支障、眠れない・食べられないがあれば、切り分けより受診が先です - 2. 休むと戻るかを観察する
休日や連休で数日以内に戻るなら、環境の層の比重が大きいと考えられます - 3. 睡眠が崩れていないか確認する
崩れている場合は先にここを扱います。他の評価が観測できなくなるためです - 4. 血液検査で不足を確認する
フェリチン・ビタミンD・ビタミンB12。身体症状を伴う場合は甲状腺機能も医療機関で - 5. 残ったら認知の層を扱う
数値に問題がなく、休んでも戻らないなら、受け取り方のパターンを見る段階です
このフローの利点は、途中で答えが出なくても情報が増えることです。「栄養ではなかった」も「環境ではなかった」も、次に進むための材料になります。
やらないほうがいいこと
切り分けの途中で、判断を難しくする進め方があります。
- 3つの層を同時に変える
サプリを始め、働き方を変え、CBTも始めると、何が効いたのか分からなくなります - 原因を1つに決めようとする
複数の層が重なっていることのほうが多く、単一原因の特定は行き詰まりやすくなります - 測らずにサプリを増やす
足りているものを足しても変化は出にくく、費用だけが積み上がります - 「気の持ちよう」で片付ける
身体の層が関わっている場合、意識の問題として扱うと解決しません - 切り分けが終わるまで受診しない
受診ラインに該当する場合、切り分けは後回しで構いません
最後の項目が最も大事です。この記事の手順は、受診の代わりではありません。
受診を検討したほうがよい場合
次のいずれかに当てはまる場合は、層の切り分けより医療機関につながることが優先されます。
- 死にたい気持ちがある/自分を傷つけたい気持ちがある
#いのちSOS(0120-061-338/24時間)、よりそいホットライン(0120-279-338/24時間)が無料・匿名で使えます - 2週間以上、仕事や家事が手につかない状態が続いている
受診の目安として広く用いられている期間です - 眠れない・食べられない状態が続いている
身体面の指標が崩れている場合は医療機関の領域です - 倦怠感・寒がり・体重変化などの身体症状を伴う
甲状腺をはじめ、身体面の評価が必要な場合があります
受診するか迷っている段階であれば 病院に行くほどではないけど心がつらいときの5つの選択肢|受診の目安も整理、予約が取れずに困っている場合は 心療内科の予約が取れない・初診が数週間先|待つ間にできることと代替手段 にまとめています。
よくある質問(FAQ)



3つの層に分けるだけで、だいぶ整理された気がする。



「全部自分のせい」って思ってた部分が、環境とか栄養とかに分かれるだけでも違うと思う。



まず何からやろう。



連休明けに戻るかどうかは、思い出せば分かるよね。そこからでいいと思う。お金もかからないし。
気分の落ち込みが続くとき、原因を1つに決めようとすると行き詰まります。身体・認知・環境の3層に分けて、確認しやすい順に潰していくほうが前に進みます。
血液検査の数値が基準内だったなら、それは切り分けが1つ完了したということです。休むと戻るなら環境の比重が大きく、休んでも戻らず数値も基準内なら、受け取り方のパターンを見る段階になります。どの結果も、次に進むための材料になります。
7日間無料でカウンセリングを1回。公認心理師・臨床心理士が対応
- 不足を測りたい方:自分で測れる血液・栄養検査キット比較|病院で測ってくれない項目を郵送で
- サプリを試したが変わらない方:サプリの効果が実感できないのはなぜ?|3ヶ月試して変わらないときに疑う4つの原因と次の一手
- 認知行動療法を試したい方:認知行動療法は自宅でできる?独学・アプリ・専門家サポートの違いを比較
- 受診すべきか迷っている方:病院に行くほどではないけど心がつらいときの5つの選択肢|受診の目安も整理
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参考文献
- Konofal E, et al. (2004) “Iron deficiency in children with attention-deficit/hyperactivity disorder” — PubMed
- Wang Y, et al. (2017) “Iron Status in Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: A Systematic Review and Meta-Analysis” — PubMed
- Markun S, et al. (2021) “Effects of Vitamin B12 Supplementation on Cognitive Function, Depressive Symptoms, and Fatigue: A Systematic Review, Meta-Analysis, and Meta-Regression” Nutrients 13(3):923 — PubMed
- 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」 — 厚生労働省
- 厚生労働省「うつ病の認知療法・認知行動療法マニュアル」 — 厚生労働省
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」(相談窓口一覧) — 厚生労働省
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